日本皮膚科学会では『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版』が作成されており、その内容は治療薬、治療方法について国内、海外の文献を参考にし推奨度を5つのレベルに分けて解説しています。
この記事ではこのようなことについてまとめています。
『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版』
この記事は日本皮膚科学会のガイドライン資料を参考にしています。
『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン』
『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版』の背景
時代の流れに対応したガイドラインのリニューアル
2010年に『男性型脱毛症診療ガイドライン』第1版が作成。
その後新しい治療薬や治療手段が登場したこと、女性の男性型脱毛症に対する概念の変化により2017年に改訂。
『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版』は2010年時のガイドラインと同様に、日本皮膚科学会と毛髪科学研究会(SHSR)の共同作業で実施。
エビデンス(文献)の収集
文献は日本や海外の論文を検索し収集
『使用したデータベース』:Medline , PubMed , SCI-RUSSCOPUS , 医療中央雑誌Web, Cochrance database systemic review を使用。
『文献採択基準』:RCT(ランダム化比較試験)のシステマティック・レビューや個々の論文を優先。
高水準の根拠が収集できない場合『非ランダム比較試験』や『症例集積研究』を参考。
『基礎的研究』や『動物実験』の文献は不採用。
エビデンスのレベルと推奨度の基準
『皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版』で採用されたエビデンスレベルと推奨度分類基準に準拠しています。
エビデンス(文献)のレベル分類(Ⅰ~Ⅵ)
エビデンスは研究や症例の質によりⅠからⅥの6種類のレベルに分けられています。
エビデンスのレベルが高い事や数が多いと推奨度は高評価を得ることになります。
レベルⅠ:システマティックレビュー/メタアナリシス
レベルⅡ:1つ以上のランダム化比較試験
レベルⅢ:非ランダム化比較試験
レベルⅣ:分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)
レベルⅤ:記述研究(症例報告や症例集積研究)
レベルⅥ:専門委員会や専門家個人の意見
推奨度の分類(A~D)
推奨度はAからDと5段階で評価されており、エビデンスのレベルと数で推奨度が決められています。
A:行うよう強くすすめる(少なくとも1つの有効性を示すレベルⅠもしくは良質のレベルⅡのエビデンスがあること)
B:行うようすすめる(少なくとも1つ以上の有効性を示す質の劣るレベルⅡか良質のレベルⅢ、あるいは非常に良質のⅣのエビデンスがあること)
C1:行っても良い(質の劣るⅢ~Ⅳ、良質な複数のⅤ、あるいは委員会が認めるⅥのエビデンスがある)
C2:行わないほうがよい(有効なエビデンスがない、あるいは無効であるエビデンスがある)
D:行うべきでない(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)
『ガイドライン』治療薬(外用)について
外用薬に関する7項目のCQ(Clinical Question)
- 推奨度は成分によって男性と女性で同じもの物もあれば、違うものもあるので注意。
- 『ミノキシジル』と『アデノシン』成分がおすすめの成分です。
Clinical Question(CQ) 推奨度(男性) 推奨度(女性) ミノキシジルの外用は有用か? A A アデノシンの外用は有用か? B C1 カルプロニウム塩化物の外用は有用か? C1 C1 t-フラバノンの外用は有用化か? C1 C1 サイトプリンおよびペンタデカンの外用は有用か? C1 C1 ケトコナゾールの外用は有用か? C1 C1 ビマトプロストおよびラテノプロストの外用は有用か? C2 C2
【外用薬7項目の詳細についてはこちらの記事に記載しています】
『ガイドライン』治療薬(内服)について
内服薬に関する3項目のCQ(Clinical Question)
- 内服薬の使用は女性は禁忌です。
- 『フィナステリド』と『デュタステリド』がおすすめの内服薬です。
Clinical Question(CQ) 推奨度(男性) 推奨度(女性) フィナステリドの内服は有用か? A D デュタステリドの内服は有用か? A D ミノキシジルの内服は有用か? D D
【外用薬3項目の詳細についてはこちらの記事に記載しています】
『ガイドライン』治療法について
治療法に関する4項目のCQ(Clinical Question)
- 『LEDおよび低出力レーザー照射』が男性女性ともに推奨度が『B』です。
- ガイドラインは『自己植毛術』はミノキシジル外用や内服薬で効果が十分でない場合すすめています。
Clinical Question(QC) 推奨度(男性) 推奨度(女性) 植毛術は有用か? 自毛植毛術はB
人工毛植毛術はD 自毛植毛術はC1
人工毛植毛術はD LEDおよび低出力レーザー照射は有用か? B B かつらの着用は有用か? C1 C1 成長因子導入および細胞移植療法は有用か? C2 C2
人工毛植毛術はD
人工毛植毛術はD
【治療法4項目の詳細についてはこちらの記事に記載しています】
まとめ
推奨度は臨床試験の文献数や症例の質で決定
ガイドラインのCQ※は14項目
※CQ:(Clinical Question)
エビデンス(文献)は症例の質で6つのレベルに分類し、推奨度をA~Dの5段階で決定。
推奨度は、成分や治療法で男性、女性で違いがある。
外用薬では『ミノキシジル』と『アデノシン』成分の推奨度が高い。
内服薬では『フィナステリド』と『デュタステリド』の推奨度が高い
治療法では、『LEDおよび低出力レーザー照射』の推奨度が高い